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【映画】「聲の形」が二回以上みる必要がある理由(前編)【感想と考察】

こんにちは。くらくです。

良い映画というものは、2回目を見たときにより楽しめる作品となっているものだと思っています。

さて、今回は2016年に京都アニメーション製作で劇場用に公開された、アニメーション作品「聲の形」の感想と考察を書いていきたいと思います。

あくまでアニメ版の考察になります。原作の意図や解釈は考慮しません。

個人的な考察も交えますので、ネタバレを気にする方はご注意ください。

 

 

 

 

 

 

映画「聲の形」って?

どんな内容か…一口に言えるものでもないので、とにかく公式のPVを見てもらえると良いと思います。


映画『聲の形』 ロングPV

 

aikoさんの主題歌がとてもキャッチーですね。

 

視聴経緯

今回この作品を見ようと思ったきっかけは、先日、twitter上でフォロワーさんが同時再生会開いていたから、という理由です。

公開当時、劇場に足を運び、その壮絶な内容に心打たれた記憶があります。

その後、NHKで放送されたりしたので、実質今回は4回目の視聴になります。

なかなか気軽に見返すことのできる作品ではないので、とても良い機会が得られたなという感じです。

 

感想

初見時の感想

劇場で初めてこの作品を見たとき、素直に面白かった、と感じることはなかったと記憶しています。

序盤のいじめのシーンは気分の良いものではありませんでしたし、なぜ硝子が自殺しようとしたのか、最後に将也がなぜ泣き出したのかうまく理解できなかったことや、物語が唐突に終わってしまった感が否めず、単純に面白かったとは言えませんでした。

 

当時私は、京アニ製作であり、大好きな西屋太志さんがキャラデザをされている、ということでこの作品を見ようと思いました。ですので、CMから得たイメージとして、単純な恋愛ものとしてエンタメ性を求めて劇場に赴いたため、実際は求めていたものと違った物語であり素直に楽しかった思えなかったのだと思います。

ただ、確かに結弦の献身さに対してや親が子を思う部分に対してはものすごく感動はした覚えはあります。また、色々と考えさせられました。 

今回の感想

見る回数を重ねるたび、理解が深まる作品だなと感じました。

四度目の視聴でありながら、西宮の祖母が亡くなるシーンからエンディングまで終始泣きっぱなしでした。

初見時から同じなのですが、やはり一番泣けてしまうのが西宮が自殺しようとするシーンのあと、結弦が「どうすればよかったんだ……」とつぶやくシーン。結弦の献身的な思いと、それに寄り添う母親の肩が震えていることにいつも涙が溢れます。

 

感動した、という一言では表せない作品だなと感じました。

そして、この作品はせめて2回は見るべきだと改めて感じました。

ではなぜ、映画「聲の形」はそれほどまでに心を揺さぶるのか、以降考察を交えて話していこうと思います。

 

 

考察

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聲の形とはどういう作品なのか

当時のCMや朝のニュースの紹介などでは、過去いじめをしてしまった石田将也が、過去いじめの対象であった聴覚障害をもつ西宮硝子に対しての贖罪を通して恋愛へと繋がっていく、そんなストーリーという印象を受けます。aikoの主題歌の影響もありますが……。

しかしこの作品は、単なる恋愛ものではありません。というか、私はこの作品では恋愛を描こうとしていない、と思っています。それどころか、聴覚障害を扱っているにも関わらず、それはテーマとは関係ないんじゃないかとも感じました。

確かに、作中硝子は将也に恋愛感情を抱いています。しかし、作中では最終的にその思いを伝えられた訳ではありません。

つまり、このストーリーの結末として、硝子と将也が結ばれることに大きな意味はないのです。

ではどういう物語なのかというと、

他人に思いを伝えることの難しさ

を描いている物語であると私は考えます。

 

他人に思いを伝える難しさとは

聲の形の登場人物、特に女性キャラクターにはとにかくリアルなイメージを持つ方も多いと思います。

特に川井と植野に関しては、リアルでもこんな人いますよね。登場人物のこんな側面が嫌だ、と感じた人は、自ずと自分自身もそんな一面があった、なんてことあると思います。

 

さて、主人公の将也は過去の経験から、自ら周りを見ないようにしていること、硝子は聴覚障害を持つことから自身を抑え込めるようなこともあり、それぞれ自分の思いを伝えるのを不得手としています。

では、それぞれのキャラクターについて掘り下げていきましょう。

 

西宮硝子の場合

硝子は本編中、自分の思いを出すことはあまりしません。

硝子は聴覚障害を持つため、基本的に手話でしか思いを伝えることはできません。手話で会話をする場合、その相手も手話を理解している必要があります。それは相手に負担を強いることでもありますし、それを硝子は理解していたはずです。

だから、将也と再開した際手話で話かけてくれたことに対して喜び、ラストシーンで植野が手話を覚えてくれたことにも喜んだのです。

小学生時代、硝子は筆談という手段を取ります。その手段は相手にかなりの負担を強いるものでした。それ故にその後のいじめ、孤立につながってしまいます。

硝子はこの頃から「笑顔」という手段をよくとります。その笑顔の裏側にあるものを包み隠して。

笑顔という手段は、相手に悪い印象を与えないでしょう。しかし、自分の思いを押さえ込んで行われるその行為は、自分にとってとても辛いことでもあるはずです。そして、小学生時代の将也にはそれが気持ち悪く思えたのです。なぜ、笑顔をするのかわからないから。

心からの笑顔と仮初めの笑顔、硝子が行う笑顔はこの二つがあります。

(京アニのすごいところは、この笑顔一つにとっても違いが現れるというところですね。表現力が光ります)

硝子が自分の思いを押し込めてしまう理由は、自分が聴覚障害を持っているため、周りに対して罪の意識を持っていることであると思います。

それがいき過ぎて自殺へと向かってしまうのだと思いました。

自身の聴覚障害で相手に、周りの人間に迷惑をかけてしまう、そういった罪の意識が、せめて相手を不快にさせないように、という思いから笑顔をするという行為に繋がっているのだと考えます。

本編の描写を見る限り、硝子が自らの思いを素直に出せるのは結弦と祖母、佐原のみで

(結弦には手話が通じ、喧嘩ができるようなので。祖母は手話を勉強しているようですが、母親は健常者と同じように育てたいという思いから手話で話さない。佐原とは楽しく会話している)

基本的には本心を言えない状況にあるのだと思います。

そんな中、本心をむき出しにできたのが小学生時代、将也と取っ組み合いになったところで、「自分も必死に頑張っている」と声に出していました。

ただ、その思いは将也に伝わることはありませんでした。

 

 

石田将也の場合

まず、念頭におくべきなのは、将也の性格が原作に比べてマイルドになっているという点と退屈を紛らわせるためにいじめをしたという描写がされていないという点です。

現代の将也は、過去の罪に対して贖罪の意識を大きく持っており、自ら耳を、心を閉ざしています。周りは自分を悪く思っているとか、無関心であるといった思いがあり、それが自らを殻に閉じ込めてしまっています。

このことから相手の顔を見て話すことを嫌い、周りを見ようとしません。自分で自分の世界を狭めており、周りは自分を悪く思っている、と思い込んでいるのです。

今回の視聴で一番印象に残る発見は、初めて将也が登校したシーンで、教室にいる将也の視界では周りからの悪い印象しか拾っていないのですが、よく見てみると将也に話しかけている人物がいるんですよね。

つまり、将也が思っているほど、周りは自分に対して無関心ではなく、悪い印象を持っている訳ではないということです。

一番顕著なのは、映画の終盤将也が退院した後、将也を心配していたクラスメイトがいたというところですね。

真柴というキャラクターの存在もここに絡んできていると思います。

原作ではその存在に大きな意味のある真柴ですが、アニメ版に関してはいなくても良いキャラと称されることが多いです。

しかしアニメ版においては、真柴は将也に興味を持つ存在として描かれていると考えます。

過去起こったこととは関係のない立場から、ただ単純に将也に興味を持った存在として真柴というキャラクターは配置されていると考えます。

そういった環境にありながらも、将也は嫌な自分を許せないのです。

罪の意識を紛らわせるため、硝子と再開し、触れ合いますが、硝子が自分をどう思っているのか、それを確かめず自分勝手な行動(ここでいう自分勝手とは、無自覚とはいえ、硝子がどう思っているかを考えず自らの贖罪を成すために動いているということ) ばかりをします。

将也は自らの世界を閉ざしてしまったばかりに、相手のことをしろうとする気持ちが欠如してしまっていたのです。

 

 

さいごに

想像以上に長くなってしまったので、残りは後編に回そうと思います。

後編ではその他のキャラクターについて触れた後、物語について総括し、残りは演出面等画面的な話と音楽面の話をしたいと思います。

拙い文章ではありますが、これを機に京都アニメーションの作品がより多くの方に愛されるようになることを願います。
 

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